2025年のEUVリソグラフィーは、半導体製造の限界を突破し、3nm・2nm世代の超微細チップ量産を実現しています。ASMLやTSMC、Samsung、Intelなど業界大手の戦略や、EUVとDUVの違い、導入コストや今後の技術革新まで詳しく解説します。EUVがエレクトロニクス産業全体にもたらすインパクトと未来像に迫ります。
2025年のEUVリソグラフィー(極端紫外線リソグラフィー)は、半導体製造の最前線を担う技術であり、現代のマイクロチップ生産に革命をもたらしています。EUVリソグラフィーは、従来のDUV(深紫外線)リソグラフィーの技術的限界を突破し、13.5ナノメートルという極めて短い波長の光を用いることで、微細で高密度な半導体デバイスの量産を可能にしました。
EUVリソグラフィーは、シリコンウェハー上に微細な回路パターンを描くために、波長13.5nmの極端紫外線を利用します。従来のランプではなく、高エネルギーレーザーで生成されたこの光は、次のようなプロセスを経てチップ製造に活用されます。
このプロセスにより、13ナノメートル以下の微細構造の形成が可能となり、トランジスタの高集積化と省電力化が実現しています。しかし、わずかな振動やミラーの欠陥が全チップを台無しにするほどの精密さが求められるため、EUV装置は半導体産業史上最も複雑な機械といわれています。
EUVリソグラフィーの実現は、オランダのASML社による長年の研究開発の成果です。ASMLは世界唯一のEUV量産装置メーカーであり、同社の装置なくして5nm、3nm以下の先端チップ生産は不可能です。
初の商用EUV装置「ASML Twinscan NXE」は2019年に登場し、180トン超の巨大装置に10万点以上の部品が組み込まれています。レーザー光源はドイツTrumpf社、ミラーはアメリカZygo社とドイツZeiss社が提供し、国際協力が結集されています。
2025年時点で世界に約200台のEUVシステムが稼働しており、ASMLは戦略的独占企業としての地位を築いています。
従来の半導体生産は193nm波長のDUV技術が主流でしたが、微細化の限界に直面していました。DUVでは多重露光や高度な補正が必要となり、コストと工程数が増大します。
EUVリソグラフィーは波長を13.5nmまで短縮し、1回の露光で高精度なパターン形成が可能です。これにより、工程の単純化・省電力化・短納期化が実現しました。
28~7nm世代でDUVが主流だったのに対し、EUVは5nm、3nm、2nmプロセスを切り拓きました。現在も、EUVとDUVを組み合わせたハイブリッド生産が行われています。
EUVリソグラフィーの導入により、3nm以下の超微細チップが量産可能となりました。この領域では、わずかな原子レベルの差異が性能や消費電力、コストに大きく影響します。
従来のDUVでは層ごとに複数回の露光が必要で、エラーやコスト増の原因となっていましたが、EUVは1回の露光で工程を完了でき、マスク数や不良率の削減につながっています。例えばTSMCは7nmから5nm移行でマスク数を80枚から約60枚に減らし、欠陥率もほぼ半減しました。
SamsungとTSMCが展開する3nmプロセスはGAAトランジスタ(Gate-All-Around)構造が採用され、EUVが三次元チャネル形成の鍵となっています。これにより、5nm比で約30%の省電力化、15%の性能向上が達成されています。
2025年には2nmチップの試験生産が始まり、High-NA EUVという改良版技術が導入されています。より高い数値開口を持つ光学系により、解像度8nm以下も実現。初号機はIntelやTSMCの工場に導入されています。
EUVによって、トランジスタサイズはシリコン分子に近づきつつあり、今後は原子レベルのリソグラフィーや新材料への展開が期待されています。
革新的なEUVリソグラフィーですが、1台あたり350~400億円以上、インフラ込みで最大1,000億円に達するコストと、前例のない精密性が要求されます。
13.5nm光は完全な真空を要し、微細なホコリさえも光を遮断します。わずかな振動や温度変化も数ナノメートル単位で大きな影響を与えるため、専用の基礎や高精度な制振・空調設備が必要です。
また、ミラーやマスクの製造も難題です。1枚のミラーには100層以上のモリブデンとシリコンが交互に積層され、その効率は約70%。光は10~12枚のミラーを経てウェハーに到達するため、実際に届くエネルギーは1%未満となります。強力なレーザーや冷却システムも不可欠です。
さらに、マスクの微小な欠陥や埃は大量の不良チップにつながるため、ナノメートル精度の専用検査装置が必要です。
このような高コスト・高難度にもかかわらず、EUVは次世代チップ製造に不可欠な唯一の技術となっています。生産コストは上昇しますが、スマートフォンやスーパーコンピュータ向けに高速・省電力なプロセッサを実現しています。
EUVリソグラフィーが現代半導体の頂点とされる一方で、次世代技術の開発も進んでいます。現在注目されるのは、光学系の数値開口を拡大した「High-NA EUV」で、解像度8nmを達成し、2nmや1.4nmプロセスへの道を開きます。
ASMLは新型「EXE:5200」装置を発表し、2026年までにIntelやTSMCの工場に導入予定です。従来機の2倍の規模を持ち、フォトマスクやアライメントシステムも刷新、解像度は60%向上します。
並行して開発が進む代替技術には以下のものがあります:
しかし、量産・コスト・安定性の観点で現時点ではEUVが圧倒的に優位です。今後10年はEUVの改良が続き、歩留まり向上やマスクコスト削減が焦点となるでしょう。
2035年以降は、EUVと量子リソグラフィーなどを組み合わせたハイブリッド技術による、原子・分子レベルの計算構造が現れると予測されます。
EUVリソグラフィーは、マイクロチップ製造の新時代を切り拓いた象徴的技術です。従来のフォトリソグラフィーの物理的な限界を突破し、3nm・2nm世代の先端半導体量産を実現、エレクトロニクス産業全体の進化を支えています。
膨大なコストと高い技術的ハードルを克服し、EUVはスマートフォンやデータセンター、スーパーコンピュータ向けの高速・省エネプロセッサの基盤となりました。
2025年現在、High-NA EUVの登場により、さらなる微細化と高性能化が期待されています。ASML、TSMC、Samsung、Intelなど業界大手は巨額投資と技術開発を継続し、半導体の未来を切り拓いています。
EUVリソグラフィーは単なる技術革新ではなく、新たなテクノロジー時代の土台です。シリコンの微細構造を深く探るほど、「光」――それも極端紫外線――が進歩の道を照らし続けていることを実感できるでしょう。