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同期電動機と誘導電動機の違い・原理・用途を徹底解説

同期電動機と誘導電動機の仕組みや特徴、用途、メリット・デメリットを詳しく解説します。現代産業や家庭で広く利用される交流モーターの基礎から応用まで、選び方のポイントもわかりやすくご紹介します。

2025年11月26日
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同期電動機と誘導電動機の違い・原理・用途を徹底解説

同期電動機および誘導電動機は、現代産業や交通、家庭用機器を支える交流モーターの二大代表です。交流電動機は、コンベヤー、ポンプ、コンプレッサー、ファン、旋盤、エレベーター、洗濯機、さらには電気自動車の駆動システムなど、私たちの身近なあらゆる機器に不可欠な存在です。これらの電動機は構造のバリエーションが多いものの、大半は「誘導型」と「同期型」の2種類に分類されます。

同期電動機と誘導電動機の基本

この2つの電動機は、動作原理・特性・効率・用途・価格など多くの点で異なります。誘導電動機はシンプルさと信頼性で最も広く普及しており、同期電動機は高精度や高効率、回転速度の安定性が求められる場面で活躍します。用途ごとに最適なタイプを選ぶためには、それぞれの構造や動作原理、そして違いをしっかり理解することが重要です。

誘導電動機とは?

誘導電動機(インダクションモーター)は、世界で最も普及している交流モーターです。これは、固定子(ステータ)の回転磁界と回転子(ローター)の実際の回転速度に生じる「すべり」(スリップ)を利用して動作します。すべりが存在するため「非同期」動作となります。

  • ステータ: 固定されたコイルに三相または単相交流を流すことで回転磁界を生成します。
  • ローター: 通常「かご型ローター」と呼ばれるアルミや銅の棒が環状に配置されたシンプルな構造。

ステータの回転磁界がローターに電流を誘起し、それによる電磁力でローターが回転します。ただし、ローターが磁界に完全に追いつくことはなく、常にわずかに遅れます。これが誘導電動機の特徴であり、信頼性とシンプルな構造、低コスト、過負荷耐性などの利点に繋がっています。粉塵や湿気、過酷な環境でもメンテナンスフリーで長寿命を誇るため、家庭から大規模産業まで幅広く使われています。

誘導電動機の動作原理

誘導電動機は、ステータの回転磁界とローターに誘起される磁界の相互作用で回転トルクを生み出します。三相交流によりステータコイルが回転磁界を発生させ、それがローターを通過することでファラデーの法則によりローターに電流が流れます。これによってローター自身も磁界を持ち、両者の磁界の相互作用で回転運動が生じます。

ローターは常にステータの磁界より少し遅れて回転(スリップ)します。負荷が増えるとローターはさらに遅れ、スリップが増加、誘起電流とトルクも増大します。これにより、一時的な過負荷にも強くなります。始動時は最大スリップとなり、高い始動トルクが発生しますが、これが高い始動電流を伴う点には注意が必要です。

同期電動機とは?

同期電動機(シンクロナスモーター)は、ローターがステータの回転磁界と完全に同調し、同じ速度で回転する交流モーターです。「すべり」がなく、ローターは磁界に遅れも先行もせず、常にピッタリと同期します。

  • ステータ: 誘導電動機と同じく回転磁界を生成。
  • ローター:
    • 永久磁石型(PMSM):最新の電気自動車やサーボ、ロボットで多用。
    • 界磁巻線型:励磁電流を供給し、制御可能な磁界を生成。

同期電動機は、供給電源の周波数(またはインバータの制御周波数)により回転速度が厳密に決まります。負荷が変化しても速度は一定で、これが高精度な機械や装置に最適な理由です。始動には特殊な仕組みが必要で、補助始動用のかご型ローターや補助モーター、またはインバータによる制御が利用されます。

同期電動機の動作原理

同期電動機は、ステータの三相交流による回転磁界と、ローターの独自磁界(永久磁石または励磁巻線)との相互作用でトルクを発生させます。ローターが同期速度に達すると「磁気的な結合」が成立し、ローターは磁界と完全に同期して回転します。

  • 50Hz → 2極で3000rpm、4極で1500rpmというように、回転速度は極数と周波数で決まります。
  • ローターの磁界は永久磁石または励磁巻線で生成。

同期運転中は、負荷変動にもかかわらず回転速度が変わらず、トルク制御や高効率運転が可能です。始動時は、ローターと磁界の速度差が大きいため自力で回転できないため、特別な始動補助が必要です。

同期電動機と誘導電動機の違い

両者は動作原理だけでなく、回転速度や効率、用途、コストなど多くの面で異なります。それぞれの特徴を比較してみましょう。

  1. スリップの有無
    誘導電動機はスリップがあり、ローターが磁界よりわずかに遅れます。同期電動機はスリップがなく、常に同期回転します。
  2. 回転速度の安定性
    誘導電動機は負荷により速度が変化しますが、同期電動機は負荷が変わっても速度は一定です。
  3. 効率と損失
    同期電動機は一般的に92~98%と高効率。誘導電動機は85~93%とやや低めです(スリップ損失が主因)。
  4. 始動特性
    誘導電動機は高い始動トルクで、ポンプやコンプレッサー、ファンに最適。同期電動機は自力始動ができず、補助装置が不可欠です。
  5. 構造の複雑さ
    誘導電動機は「かご型ローター」でシンプル。同期電動機は永久磁石や励磁巻線、位置センサーなどで構造が複雑化します。
  6. コスト
    誘導電動機は大量生産で安価。同期電動機は高価(磁石や制御機器が必要なため)。
  7. 制御・運転方法
    誘導電動機は直接商用電源やインバータで運転可能。同期電動機はPMSMなどでは電子制御がほぼ必須です。
  8. 用途
    誘導電動機は汎用性・信頼性重視。同期電動機は高精度・高効率・高トルク重視の分野で活躍します。

誘導電動機のメリット・デメリット

メリット

  1. シンプルな構造
    かご型ローターと最小限の部品で構成され、壊れにくく長寿命。ブラシ・リング・励磁装置不要。
  2. 高い信頼性
    長時間の連続運転や振動、湿気、温度変化に強い。
  3. 低コスト
    大量生産・シンプル構造で安価。
  4. 優れた始動特性
    高始動トルクでポンプやファン、慣性負荷機構に最適。
  5. メンテナンスフリー
    定期的なベアリング点検以外、ほぼ保守不要。

デメリット

  1. スリップによる速度変動
    負荷によって速度が変化し、高精度用途には不向き。
  2. 効率がやや低い
    スリップ損失やローターの励磁損失により同期型より効率が劣る。
  3. 高い始動電流
    始動時には定格の5~7倍の電流が流れるため、配電設計に注意が必要。
  4. 制御の制約
    高精度なトルク・速度制御にはインバータが必要。

同期電動機のメリット・デメリット

メリット

  1. 絶対的な回転速度の安定性
    負荷変動に関係なく常に一定速度で回転可能。精密機械やロボットに最適。
  2. 高効率
    92~98%の高効率で省エネ。
  3. 低速域でも高トルク
    永久磁石ローターなどでゼロ回転から高トルク発生、電気自動車や産業機械に最適。
  4. 力率補正の応用
    励磁巻線型は進み力率運転でシステム全体の力率改善が可能。
  5. 精密制御が可能
    インバータ制御と組み合わせ高精度な位置決めや速度制御に対応。

デメリット

  1. 始動が難しい
    自力始動できず、補助装置やインバータが不可欠。
  2. コストが高い
    磁石・励磁巻線・位置センサーなどで高価。
  3. 制御回路が複雑
    安定運転には高度なコントローラと位置検出が必要。
  4. 過負荷に弱い
    許容を超えると同期を外して停止するリスクがある。
  5. メンテナンスが難しい
    磁石や励磁部の状態管理が必要。

誘導電動機の主な用途

誘導電動機は、その汎用性と堅牢さ、低コストにより、世界で最も採用されている電動機です。過酷な環境や様々な機械負荷に適応できるため、多様な分野で利用されています。

産業・製造業

  • コンベヤー、搬送装置
  • 研磨機、工作機械
  • 破砕機、産業用ファン

長寿命・メンテナンスの容易さが評価されています。

ポンプ・コンプレッサー

  • 循環・深井戸ポンプ
  • コンプレッサー、冷凍機

高始動トルクと負荷耐性が強みです。

換気・空調設備

  • 家庭用・産業用ファン
  • エアコン、空気清浄機、換気システム

静音・信頼性・シンプルさが導入理由です。

家庭用電化製品

  • 旧型洗濯機、ポンプ、換気扇
  • キッチン家電、冷蔵庫(コンプレッサー)

電圧変動に強く、長期間保守なしで稼働できます。

輸送機器・昇降装置

  • エレベーター、リフト、エスカレーター

耐久性と長寿命が求められる場面で活躍します。

同期電動機の主な用途

同期電動機は、回転精度・高効率・高トルク・省エネ性能が求められる高度な分野で利用されています。

精密駆動装置・工作機械

  • ロボットライン、サーボモーター
  • CNC工作機械、精密位置決めシステム
  • 印刷・包装機械

絶対的な速度安定性が不可欠な用途で導入されています。

電気自動車・ハイブリッド車

  • PMSM型同期モーターが主流(Tesla、BMW、TOYOTA、BYD等)
  • 高効率・高トルク・コンパクトさが特徴

牽引・産業用駆動装置

  • 電気機関車、フォークリフト
  • 大型コンベヤー、昇降装置

エネルギー効率とトルク性能が生産性向上に貢献します。

発電・エネルギー分野

  • 水力・火力発電、風力発電、非常用ディーゼル発電

同期発電機は、電力系統の周波数・電圧を高精度に維持します。

コンプレッサー・高効率ポンプ・冷却装置

インバータ制御と組み合わせ、エネルギー消費削減を実現。高効率化の動きが進んでいます。

自動化・ロボット工学

  • サーボ駆動ロボット、医療機器、3Dプリンター、ラボ装置

高精度・高速・省エネが求められる分野で不可欠な存在です。

まとめ

同期電動機と誘導電動機は、現代社会のインフラや生産現場、家庭を支える交流モーターの中核的存在です。誘導電動機は、シンプルな構造・低コスト・高耐久性により、長寿命・過酷な環境・大量生産用途に最適です。一方、同期電動機は、回転精度・高効率・低速トルクで優れ、ハイテク分野や自動車、発電、産業用駆動のキーテクノロジーとなっています。

両者は相互補完的な技術であり、用途に応じて最適な選択が可能です。それぞれの特徴と違いを理解することで、エンジニアや自動化の専門家、そしてユーザーが、最良のソリューションを選択できるようになります。

タグ:

同期電動機
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