ホーム/テクノロジー/GPONとは?光回線インターネットの仕組み・特徴・導入メリットを徹底解説
テクノロジー

GPONとは?光回線インターネットの仕組み・特徴・導入メリットを徹底解説

GPONは高速・安定・省エネを実現する最新の光回線技術です。本記事では、GPONの仕組みやFTTHとの関係、メリット・デメリット、他のPON方式との違い、導入手順までわかりやすく解説します。家庭やオフィスのインターネット選びに役立つ情報が満載です。

2025年11月26日
8
GPONとは?光回線インターネットの仕組み・特徴・導入メリットを徹底解説

GPON(Gigabit Passive Optical Network)は、現代の高速・安定した光回線インターネットを支える代表的な技術であり、多くのFTTH(光ファイバーを各家庭まで直結するサービス)で採用されています。パッシブ型の光ネットワークを用いることで、多数のユーザーが品質を損なうことなく同時にインターネットを利用でき、インフラの信頼性・拡張性・効率性を実現しています。

GPONとは? なぜ今これほど普及しているのか

GPONは、ギガビット級のパッシブ光ネットワーク技術であり、プロバイダーから各家庭やオフィスまで光ファイバーケーブルで直接インターネットを届けます。最大の特徴は、プロバイダー側とユーザー側の間に電源を必要とするアクティブ機器が一切ないこと。全ての主要構成要素がパッシブ(受動型)であるため、故障や発熱リスクが低く、保守も最小限で済みます。

この仕組みでは、プロバイダーの中心局から伸びる1本の光ファイバーをパッシブスプリッターで分岐し、複数ユーザーへ効率的に配信。これにより、多数のユーザーに対して高速通信を低コストで提供できます。

  • 最大2.5Gbps(下り)、1.25Gbps(上り)の高速通信
  • 遅延が極めて少なく、ゲームやストリーミングにも最適
  • 光ファイバーはノイズの影響を受けにくい
  • アクティブ機器がないため障害ポイントが少ない
  • 光ケーブルは非常に長寿命

GPONは、ネットワークの拡張が容易で、次世代のXG-PONやXGS-PON標準にもスムーズに対応できるため、日本を含む多くの国でFTTHの主流技術となっています。

GPONの仕組みをわかりやすく解説

GPONネットワークは、1本の光ファイバーをパッシブスプリッターで複数のユーザーへ分配する「点対多点」構造です。プロバイダー側から電源を供給する必要がなく、全て受動型の装置で構成。これが高い信頼性と低コスト運用を実現しています。

  • 中心局には「OLT」(Optical Line Terminal)という装置が設置され、ネットワークを一元管理
  • ビルやマンション、路上などにパッシブスプリッター(1:16、1:32、1:64など)が設置されて信号分配
  • 各家庭やオフィスには「ONT」(Optical Network Terminal)や「ONU」(Optical Network Unit)が設置され、光信号をイーサネットへ変換

通信は2方向に分かれます:

  • ダウンストリーム:プロバイダーから各ユーザーへの一斉配信(ブロードキャスト)
  • アップストリーム:ユーザーからプロバイダーへの通信は、時分割(TDMA)で衝突を防止

OLTが全体の帯域や割り当て時間を管理し、各ONTは指定されたスロットでのみデータを送信。これにより、高速かつ安定したネットワークが実現します。

光の伝送原理や詳細な構造については、より専門的な解説記事をご覧ください。

光ファイバーインターネットの仕組みや速度、光データ通信の原理をさらに詳しく知る

GPONネットワークの主な構成要素

OLT(Optical Line Terminal)

プロバイダー局舎に設置されるGPONネットワークの中枢装置。光信号の生成や帯域管理、ユーザーごとのスロット割り当てなど、ネットワーク全体の統制を担います。1つのOLTポートで数十〜数百のユーザーをカバー可能です。

パッシブスプリッター

外部電源や電子回路を持たない光信号の分岐器。8、16、32、64...といった分岐数があり、マンションや配電盤、路上ボックスなど様々な場所に設置されます。複数階層にカスケード接続することで、広いエリアを効率よくカバーできます。

ONT/ONU(ユーザー宅内端末)

各家庭やオフィスに設置される光ネットワークの終端装置。光信号をイーサネットに変換し、接続認証やデータの暗号化、通信品質の監視も行います。Wi-Fiルーター機能を内蔵したタイプも普及しています。

GPONと他のPON方式の違い・進化

GPONはPON(パッシブ光ネットワーク)ファミリーの標準技術のひとつであり、特定の速度・プロトコル・構成で定義されています。他にも以下のようなバリエーションがあります:

  • EPON:日本発のイーサネットベースの標準
  • GPON:ITU-Tによる国際標準。効率性・拡張性が高い
  • XG-PON:下り最大10Gbpsへ進化した次世代GPON
  • XGS-PON:上下対称10Gbps/10Gbpsで法人向けにも最適
  • NG-PON2:最大40Gbps対応のマルチウェーブ方式

GPONの最大の特徴は、GEM(GPON Encapsulation Method)という高効率なカプセル化技術を採用し、様々なプロトコルのデータを柔軟に伝送できること。EPONはよりシンプルなイーサネットベースですが、大規模環境ではGPONの方が効率的です。XG-PON/XGS-PONへは、OLTやONTの交換のみで既存インフラを活かしながら移行可能です。

FTTHとは? 光ファイバーが家庭に届く仕組み

FTTH(Fiber To The Home)は、プロバイダーの光ファイバーを直接各家庭や戸建てまで引き込む最先端のインターネット接続方式です。従来のFTTB(ビルまで光)、FTTN(地域ノードまで光)とは異なり、途中に銅線区間を挟まず、信号の損失・ノイズの影響を最小化できます。

  1. プロバイダーの光ファイバーが道路から配電ボックスまで到達
  2. 建物の共有部分に光分配箱を設置
  3. 各戸へ細い光配線を引き込み
  4. 宅内にONT(光終端装置)を設置し、イーサネット出力へ変換
  5. 必要に応じてWi-Fiルーターへ接続
  • 信号損失が極めて少ない
  • ノイズや劣化の影響をほぼ受けない
  • 距離に関係なく高速通信が安定
  • 将来の高速化にも配線交換不要

FTTHは新築マンションだけでなく、既存住宅への導入も拡大中。GPONとの組み合わせで、最も高速かつ安定した家庭用インターネットが実現できます。

GPONの通信速度とその制約

GPONは大量ユーザー向けの光アクセス方式としてトップクラスの速度を誇りますが、実際の通信速度はネットワーク構成や同時接続数によって変わります。標準仕様では下り2.488Gbps、上り1.244Gbpsの帯域を複数ユーザーで共有。1:32や1:64分岐が一般的ですが、ユーザー全員が同時に大容量通信を行うケースは稀なため、実際には300~1000Mbps程度の安定した速度を確保できます。

速度の制約要因:

  • スプリッターの分岐比率(高すぎると帯域逼迫しやすい)
  • 光ファイバーや接続部の品質・長さ
  • 自宅内のネットワーク設備(Wi-Fi、ルーター等)の性能

光ファイバーはノイズに強く、距離による速度低下がほぼ無いため、特にオンラインゲームや動画会議など遅延要求の高い用途に最適です。1Gbps超の契約にはXG-PON/XGS-PONへのアップグレードも容易で、将来性も抜群です。

GPONのメリット・デメリット

メリット

  1. 高速通信
    基本プランでもギガビット級の速度を実現。宅内まで光ファイバーが届くため、距離による速度低下がありません。
  2. 低遅延
    パッシブ構成なので、ゲームやリモートワークに必須の低遅延(2~4ms)を実現。
  3. 高信頼性
    アクティブ機器が少なく、スプリッターも故障リスクが低い。
  4. 省エネ
    外部電源不要で、屋外設備の消費電力がほとんどありません。
  5. 拡張性
    OLTのポート追加やスプリッター増設で柔軟なスケールアップが可能。

デメリット

  1. 帯域共有
    同一OLTポート内で多数ユーザーが帯域を共有するため、分岐数が多すぎると混雑時に速度低下リスク。
  2. 設置品質依存
    光ファイバーの施工不良やチープなスプリッターは、信号品質を著しく損なう。
  3. 古い建物での導入難易度
    既存住宅での光配線が難しい場合もある。

総合的には、GPONは家庭用光回線インターネットの最適解と言えるでしょう。

GPON導入の流れと注意点

  1. 導入可否の確認
    プロバイダーがエリアや建物の光ネットワーク状況を確認します。新築やリノベ済みマンションならほぼ導入済みです。
  2. 宅内への光配線工事
    ケーブルダクトや壁沿い、巾木下などに光ケーブルを慎重に敷設。光ファイバーは曲げに弱いため、施工時に細心の注意が必要です。
  3. スプリッターへの接続
    共有部に設置された光分配箱の空きポートに接続。
  4. ONT/ONU設置
    宅内の適切な場所に終端装置(ONT/ONU)を設置し、イーサネット出力を確保。
  5. ネットワーク認証・初期設定
    プロバイダーが各端末の登録・認証を行い、ユーザーは特別な設定不要で利用開始できます。
  6. 信号品質チェック
    光損失(dBm)を測定し、必要に応じて再調整。

これらの工程を経て、ユーザーはWi-Fiルーターなどを接続するだけで高速インターネットをすぐに利用できます。

まとめ

GPONは、高速・安定・省エネ・拡張性といった多数の利点を兼ね備え、FTTH時代の標準技術として今後も進化を続けます。パッシブ構成の光ネットワークは故障リスクや運用コストを抑え、ユーザーごとに純粋な光回線を提供。次世代標準(XG-PON、XGS-PONなど)へのアップグレードも簡単です。家庭・オフィスのインターネット基盤として、GPONは今後も最適な選択肢であり続けるでしょう。

タグ:

GPON
光回線
FTTH
インターネット
ネットワーク
光ファイバー
通信速度
導入ガイド

関連記事