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無線中継通信回線とは?仕組み・特徴・最新用途まで徹底解説

無線中継通信回線(ラジオリレー回線)は、光ファイバー全盛の現代でも欠かせない通信技術です。その仕組み、原理、メリットやデメリット、光ファイバーとの違い、現代の活用シーンまで詳しく解説。山岳地や僻地、災害時のバックアップなど、今も多くの現場で選ばれる理由をわかりやすく紹介します。

2025年11月26日
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無線中継通信回線とは?仕組み・特徴・最新用途まで徹底解説

無線中継通信回線(ラジオリレー回線)は、現代でもなお重要なデータ伝送技術のひとつです。光ファイバー、衛星通信、携帯電話網が普及する中でも、無線中継通信は基幹回線やバックアップ、山岳地帯や森林、オペレーターの鉄塔、ケーブル敷設が困難または高コストな場所で不可欠な役割を果たしています。

無線中継通信回線の仕組みと原理

無線中継通信回線とは、狭指向性の無線ビームを使い、数十キロメートル離れた2点間または複数拠点間でデータを伝送するシステムです。必要に応じて中継局(リピーター)を設置し、「点-点-点」のチェーンを構成します。これにより、最小限のインフラコストで、安定した大容量・低遅延通信が可能となります。

なぜ今も使われ続けるのか

無線中継通信が半世紀以上経った今も利用される理由は、そのシンプルさ・自律性・高信頼性・他の通信手段が不可能な場所でも展開できる柔軟性の組み合わせにあります。現代の通信網でこの技術が不可欠である理由を理解するには、その仕組みや動作原理を知ることが大切です。

無線中継通信回線の歴史と特徴

無線中継通信回線は、狭い無線ビームによる遠隔地間のデータ伝送システムです。アンテナ間に障害物のない見通しが必要で、数GHz~数十GHzの周波数帯を使用します。携帯電話やWi-Fiと異なり、多数のユーザー向けではなく「点対点」または「ポイントチェーン」の通信専用です。

この技術は20世紀中頃、軍事通信分野でケーブル敷設不要かつ高信頼な長距離通信手段として登場しました。後に通信事業者が都市間・基地局間の回線として導入し、光ファイバー普及前は長距離電話・テレビ・初期のデジタル通信を支えました。特に山岳地帯、森林、草原、砂漠などの過酷な環境で、無線中継通信は革命的な技術でした。

その後はデジタル化・高速化・小型化・省エネ化が進み、現在でも光ファイバーのバックアップや、複雑な地形、携帯事業者のトランスポート技術として活躍しています。

無線中継通信回線の動作原理

無線中継回線は、一方のアンテナからもう一方のアンテナへ、狭く絞った無線ビームを照射して信号を送信します。アンテナは極めて正確に向きを合わせ、光のように見えない「直線」でエネルギーを伝送します。障害物があると信号は減衰または消失するため、見通しが必須です。

各中継局は信号の受信・増幅・再送信を担います。距離や地形によってリピーターを追加し、長距離の通信チェーンを形成します。

1~80GHzのマイクロ波・ミリ波を使用し、周波数が高いほど速度と指向性が増しますが、雨や雪、霧の影響も受けやすくなります。特に大口径パラボラアンテナやパネルアンテナを使い、軸合わせは数度未満の高精度が求められます。

データ伝送はQAM変調や圧縮・誤り訂正などのデジタル技術で実現され、大容量・高信頼性を確保しています。ケーブルの代わりに「見えないワイヤ」として、迅速かつ柔軟な通信チャネルの構築が可能です。

無線中継通信回線の構成要素

  • 無線中継局(屋外ユニット、ODU):アンテナ直近に設置され、無線信号の送受信・増幅・変調・妨害除去を担当。
  • アンテナ:主に直径30cm~3mのパラボラ型。大きいほど指向性が高く、遠距離伝送に有利。
  • 屋内ユニット(IDU):サーバールーム等に設置され、デジタルデータ処理やネットワークとの接続、管理・監視を行う。
  • フィーダーシステム:アンテナと無線機器をつなぐ導波管やケーブル。高周波では導波管が主流。
  • リピーター:中継局間に障害物や長距離がある場合に信号を中継・増幅。

これらの構成要素が連携し、市街地の短距離から山岳地帯の長距離まで多彩な回線設計が可能です。

周波数帯ごとの特徴

  • 低帯域(1~6GHz):30~50kmの長距離基幹回線に最適。気象影響が小さいが、ビーム拡散や周波数帯域制限が課題。
  • 中帯域(7~13GHz):10~25kmの伝送にバランスが良く、携帯・鉄道・電力系通信で多用。
  • 高帯域(15~23GHz):数百Mbps~1Gbps以上の高速伝送が可能だが、5~15kmと距離は短め。豪雨時の減衰も増加。
  • ミリ波(24~38GHz、60~80GHz):5~10Gbps超の超高速通信が可能。ただし1~5kmと短距離かつ、天候の影響を強く受ける。

高周波数ほどビームは細くなり、雨・雪・霧・湿度・反射の影響が大きくなります。地形や用途に応じ、最適な周波数帯を選定します。

無線中継通信回線のメリット

  1. ケーブル不要:光ファイバーや銅線の敷設が困難な場所でも、見通しのある2点で通信可能。
  2. 迅速な展開:数時間~数日で設置でき、災害時や仮設現場、工事・遠征・バックアップ用途に最適。
  3. 大容量伝送:最新機器なら数十~数百Mbps、ミリ波では5~10Gbpsの伝送が可能。
  4. 高信頼性・自律性:パッシブな空間伝送でケーブル損傷や腐食リスクがなく、機器も長寿命。
  5. 難所での唯一の選択肢:山岳・森林・砂漠・過疎地など、他の通信手段が使えない場所でも確実に設置可能。
  6. 数百kmのチェーン構築:リピーターを使い、長大な通信路を作れる。
  7. 低メンテナンスコスト:地下や架空の光ファイバーと異なり、定期的な路線保守が不要。

これらのメリットにより、無線中継通信は今も多くの現場で選ばれ続けています。

無線中継通信回線のデメリット

  1. 見通し依存:山・丘・高層ビル・樹木・金属構造物などの障害物があると通信不可。
  2. 局間距離の制約:低周波帯でも数十km、高周波帯では1~5km程度。長距離はリピーター設置が必要。
  3. 気象の影響:雨・湿雪・霧・高湿度は特にミリ波(23~80GHz)で大きく減衰。
  4. アンテナの精密調整:微小なズレでも通信品質が低下し、定期的な点検・調整が必要。
  5. 周波数帯域の制限:使用周波数は国家の免許制で、帯域幅も限定的。
  6. 相互干渉のリスク:都市部など多くの無線回線が並立する場所では計画設計が不可欠。

これらの制約があるものの、ケーブル通信が困難な現場や高信頼・柔軟性重視の現場では、無線中継通信は今も不可欠な技術です。

無線中継通信回線と光ファイバーの比較

  • 伝送速度:光ファイバーは数十~数百Gbps、DWDM技術でTbps級も可能。無線中継は通常100~500Mbps、ミリ波で5~10Gbps。
  • 遅延・安定性:どちらも低遅延だが、光ファイバーは天候の影響を受けにくい。
  • インフラ要件:光ファイバーは路線敷設や許認可、工事が必要。無線中継は見通しさえあれば短期間設置が可能。
  • 信頼性・冗長性:光ファイバーは断線リスクがある一方、無線中継は空間伝送のため物理的断線がなく、バックアップ用途にも活用される。
  • コスト:光ファイバーは初期投資・工期が大きい。無線中継は短納期・低コストで導入可。
  • 拡張性:光ファイバーは容易に増設可能。無線中継は周波数や距離で物理的制約がある。

要約:都市や幹線・高速回線は光ファイバー、山岳・僻地やバックアップは無線中継、携帯事業者は両者の組み合わせが主流です。

無線中継通信回線の主な活用シーン

  1. 携帯電話事業者:基地局間のトラフィック輸送や光回線のバックアップ、迅速な新設に活用。LTEや5G基地局も多く無線中継で接続。
  2. 山岳・僻地:山・森林・ツンドラ・砂漠での村落や観測所、産業拠点の通信手段。
  3. エネルギー・産業分野:発電所、パイプライン、変電所などでのテレメトリやSCADA、セキュリティ通信。
  4. 軍事・政府機関:高信頼・長距離を活かした防災・機密通信、フィールドネットワーク。
  5. 災害・仮設通信:建設現場、遠征、緊急時の一時回線、復旧作業での即応性。
  6. 遠隔地インターネット:山岳ロッジや工事現場、灯台・港湾など、ケーブルが届かない場所の唯一の通信手段。

このように、柔軟性と自律性の高さから、光ファイバー主流の現在でも無線中継通信は多様な現場で重宝されています。

なぜ今も無線中継通信が選ばれているのか

光ファイバーの進化が著しい現代においても、無線中継通信は消えることなく活躍し続けています。最大の理由は、他の技術では置き換えられない展開の迅速さ、バックアップ性、コスト効率、遠隔地対応力にあります。

  • インフラがない場所でも、見通し2点があれば即座に通信路を開設できる。
  • 光ファイバーの断線や事故時、即座に切り替えられるバックアップとして有効。
  • 最新機器では10Gbps級の高速伝送が可能で、多くの用途に十分対応。
  • メンテナンス負担が小さく、遠隔地や過疎地でも長期安定運用が実現。
  • 変調方式や耐障害性、気象適応などの技術進歩により、今後も需要は続く。

そのため、無線中継通信は光ファイバーを補完し、災害や特殊環境にも強いハイブリッドネットワークの基盤として今後も使われ続けるでしょう。

まとめ

無線中継通信回線は、信頼性・機動性・他技術では届かない場所での柔軟性という特徴により、現代通信インフラの重要な一部であり続けています。携帯電話基地局、産業拠点、僻地集落、災害対策など、さまざまな分野で安定した通信を提供しています。

光ファイバー全盛時代にも、迅速な導入、最小インフラ、物理的断線からの防御、難所での展開力など独自の強みで選ばれる存在です。技術進化により高速・高信頼化も進み、今後も不可欠な通信インフラとして発展し続けるでしょう。

無線中継通信は光ファイバーと競合するのではなく、両者が補完し合い、柔軟かつ災害にも強いネットワークを構築する鍵となっています。だからこそ、数十年にわたり選ばれ続け、今後も長く活用されるのです。

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