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パスワードレス認証とは?Passkeys・FIDO2・WebAuthn徹底解説

パスワードレス認証が注目される理由や従来のパスワードの限界、Passkeys・FIDO2・WebAuthnの仕組みと特徴、主要な認証方式、導入状況、課題や今後の展望まで徹底解説します。安全性と利便性を両立した次世代認証の全体像がわかります。

2025年11月20日
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パスワードレス認証とは?Passkeys・FIDO2・WebAuthn徹底解説

パスワードレス認証は、現代のデジタルセキュリティの新たな標準として注目を集めています。従来のパスワードは50年近くにわたりセキュリティの中心的役割を果たしてきましたが、今や最大の弱点となっており、PasskeysやFIDO2、WebAuthnといった最新技術がその課題を根本から解決しようとしています。

なぜパスワードが時代遅れなのか

多くのデータ漏洩は、複雑なハッキングよりも、ユーザーの単純なミス(弱いパスワード、使い回し、フィッシング、SMSコードの盗難、古い認証システムの脆弱性など)によって発生しています。どんなに強力なパスワードでも、盗まれたり覗き見されたり、だまし取られたりすれば意味がありません。

そのため、Google、Apple、Microsoftなどの大手IT企業は、パスワード入力を不要とするパスワードレス認証への移行を進めています。この認証方法では、端末や生体認証、暗号鍵による本人確認が行われ、「知識」ではなく「所有」や「存在」で認証を完了させます。

パスワードレス認証とは?

パスワードレス認証とは、パスワードの入力なしでアカウントにログインする仕組みです。パスワードの代わりに暗号化された鍵や生体認証、信頼できるデバイスによる確認が使われます。パスワードという「人間の弱さ」を排除し、推測や盗難のリスクを根本からなくします。

  • 秘密鍵はスマートフォンやノートPCなどの端末に安全に保存され、外部に出ることはありません。
  • 公開鍵はサーバーに保存され、本人確認のためだけに使われます。

ユーザーがログインするとき、サーバーは端末にリクエストを送り、デバイスが本人を認証します。このプロセスにはパスワードが登場しないため、フィッシングや情報の傍受は無意味になります。

なぜ世界はパスワードをやめるのか

  1. パスワードは脆弱で使いまわされやすい:簡単な組み合わせや使いまわし、偽サイトでの誤入力が多発しています。
  2. 最新の攻撃がますます巧妙化:セッションの盗難、偽の認証フォーム、悪質な拡張機能など、新たな手口が次々に登場。
  3. データベースの流出が深刻化:複雑なパスワードでも、サーバーが流出すれば無意味です。
  4. パスワードレスは一挙に問題解決:秘密鍵は外部に出ず、サーバーにも保存されず、流出しても安全です。

さらに、パスワードレスはユーザー体験を大幅に向上させます。顔認証や指紋、端末PIN、物理的なセキュリティキーなど、ユーザーが常に持っているものを使うため、覚える必要がありません。

Passkeys・WebAuthn・FIDO2の仕組みと特徴

パスワードレス認証の基盤には、Passkeys、WebAuthn、FIDO2という相互連携したテクノロジーがあります。これらは次世代のセキュアなインターネットの核となり、秘密鍵を端末内にとどめたまま、サーバーでの脆弱なデータ保存を不要にします。

Passkeys ― アカウントレベルでのパスワード置換

  • 秘密鍵はiPhoneのSecure Enclave、WindowsのTPM、AndroidのTitanなど、端末の安全モジュールに保存
  • 公開鍵はサーバーに保存され、署名検証にのみ使用

ログイン時、サービスは端末にリクエストを送り、デバイス内のPasskey管理アプリが秘密鍵で署名。サーバーは公開鍵で署名を確認します。パスワードは一切関与しません。

  • 端末外に秘密鍵が出ないため盗難不能
  • フィッシング耐性:偽サイトへの認証は不可
  • Face IDや指紋、PINでワンタップ認証

WebAuthn ― ブラウザでのパスワードレス標準

  • Chrome、Safari、Firefox、Edgeなど主要ブラウザに標準対応
  • パスワード入力不要、直接デバイス認証
  • スマホ、PC、物理キーなど幅広いデバイスで利用可能

従来のパスワード入力に代わり、端末での本人確認がリアルタイムに行われます。

FIDO2 ― パスワードレスの基礎規格

  • Google、Microsoft、Appleらが主導したFIDOアライアンスによる標準化
  • 鍵生成・保存・署名・検証のルールを規定
  • 知識(パスワード)から「所有」(鍵)への転換
  1. 所有デバイス(端末内の秘密鍵)
  2. 生体認証やPINでのアクセス許可
  3. 公開鍵を使ったサーバー側の検証

これにより、フィッシングやパスワード総当たり、データベース流出、SMSコード傍受など従来型のリスクがほぼ解消されます。YubiKeyやTitan Security Keyなど物理トークンにも対応しています。

パスワードレス認証の主要な方式

生体認証 ― 顔・指紋・声

Face IDやTouch ID、Windows Hello、Android端末の指紋認証などが代表例です。パスワードレス認証では、生体情報は端末内の安全チップに格納され、サーバーに送信されることはありません。

  • 生体データは外部流出しない
  • ネット越しの盗難リスクがない
  • 全てローカルで認証完結

ハードウェアトークン ― 次世代セキュリティキー

  • YubiKey、Google Titan Security Key、SoloKey、FIDO2対応スマートカードなど
  • USB/NFC/Bluetoothで接続し、物理的なタッチで認証
  • フィッシング不可、リモート攻撃に強い、端末依存しない

信頼できるデバイス ― スマホやPCが"鍵"に

  • 秘密鍵を端末に保存
  • 生体認証やPINで保護
  • PasskeysやFIDO2に対応&クラウド同期
  • iCloudやGoogle Password Managerでのキー管理・復旧

Apple、Google、Microsoftの各エコシステムでは、複数端末の同期や復旧も容易です。

なぜパスワードレスは従来のパスワードより安全なのか

  1. 盗まれるパスワード自体が存在しない:秘密鍵は端末の外に出ず、サーバーにパスワードを保存しません。
  2. フィッシングが無効:PasskeyやFIDO2は登録済みドメインでのみ動作し、偽サイトでは認証できません。
  3. SMSコードの傍受リスクがゼロ:SMSは使用しないため、SIMスワップや悪質アプリによる盗難も無意味です。
  4. 暗号操作が全て端末内で完了:秘密鍵は安全チップ内で隔離され、外部持ち出し・コピーが不可能です。
  5. 生体認証の追加で安全性強化:生体データはクラウドやサーバーに残らず、端末内のみ。
  6. 総当たり攻撃・ブルートフォースが不可能:パスワードではなく2048bitの暗号鍵を使用し、事実上突破不能です。

2025年のパスワードレス導入状況

GoogleとAndroid

Googleは「パスワードレス・ファースト」を掲げ、AndroidやChromeでPasskeysを標準採用。Googleアカウント、YouTube、Gmail、WorkspaceおよびWebAuthnに対応した外部サイトでのログインも可能です。Passkeysはクラウド同期&Titan Mチップで保護されています。

Apple

AppleはiCloud、Safari、App StoreなどでPasskeysを全面導入。Face IDやTouch IDによる生体認証が標準となり、iCloudキーチェーン経由でキーの同期・復旧が行われます。

Microsoft

MicrosoftはFIDO2を推進し、Windows Helloでの生体認証、PIN、セキュリティキーによるログインを標準化。Azure AD、Outlook、OneDrive、Xboxなど各種サービスもPasskeys対応が進んでいます。

銀行・フィンテック

金融業界でも、スマホの生体認証やPasskey、ハードウェアトークンによる認証、モバイルOSのFIDO2対応アプリによるトランザクション認証が広がっています。フィッシング対策としてPasskeysが主流です。

オンラインサービス・大手プラットフォーム

TikTok、PayPal、eBay、GitHub、Facebook、Reddit、Amazon、Dropboxなど多くのサービスで、パスワードまたはPasskeyの選択式ログインが提供されています。統計上、ユーザーは生体認証への移行を加速させています。

企業システム・従業員セキュリティ

2025年にはZero Trustアーキテクチャの一環として、FIDO2トークンによる業務システムのログイン、管理画面やVPNのWebAuthn化、重要インフラへのアクセス制限などが標準となりました。物理YubiKeyトークンの採用も拡大しています。

IoT・スマートホーム・家電

次世代のIoT機器やスマートホームデバイス(スマートロックやカメラ、ハブ、ルーターなど)でも、スマホ+生体認証によるパスワードレスログインが一般化し、利便性と安全性を両立しています。

パスワードレス認証の課題と今後の展望

  1. 端末依存と紛失リスク:秘密鍵が端末に保存されるため、端末紛失時や買い替え時の復旧手続きが重要です。クラウド同期や予備デバイスによる復旧策も進化しています。
  2. プラットフォーム間の互換性:全サイト・全システムがWebAuthnやPasskeysに完全対応しているわけではなく、古いインフラの移行には時間がかかります。
  3. セキュリティチップの普及度:Secure EnclaveやTPMなどのハードウェアモジュールが古い端末には搭載されていない場合があり、パスワード認証との併用も残っています。
  4. デジタル格差・アクセシビリティ:高齢者や子ども、端末を持たないユーザーには導入が難しいケースもあります。
  5. 復旧の複雑さ:パスワードはメールでリセットできますが、Passkeysでは予備デバイスやクラウドマネージャー、物理トークンが必要な場合も。
  6. 端末への物理的な攻撃:秘密鍵は安全チップで守られていますが、root化や物理的な分解など高度な攻撃リスクも存在します。
  7. 法制度や企業ポリシーの対応遅れ:新しい認証方式に合わせた法律や規定、業界標準の整備が今後の課題です。

まとめ

パスワードから次世代認証への移行は、単なる技術進化ではなく、デジタルセキュリティの根本的なパラダイムシフトです。PasskeysやWebAuthn、FIDO2は、パスワードが抱えていたあらゆる脆弱性を解消し、サーバーに脆弱なデータを残さず、フィッシングや総当たり攻撃も不可能にします。

ユーザーにとっては、顔認証やスマホでのワンタップ確認だけで安全にログインできる利便性があり、今後は銀行や大手サービス、政府・企業システムなどで標準方式となるでしょう。端末依存や復旧手続き、アクセシビリティといった課題は残っていますが、パスワードが「存在しない」時代はすぐそこまで来ています。

パスワードレス認証は、より安全で快適なデジタル社会への大きな一歩です。今後数年で、私たちの「パスワード入力」は歴史のものとなるでしょう。

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