アサシンクリードシリーズの初代から最新作Mirage、そして今後予定されているHexeやBeyondまで、進化の歴史とゲームシステムの変遷、物語の多層性を詳細に解説します。各タイトルごとの特徴や、パルクールやステルスなど伝統的要素とRPG化の流れ、新たな舞台や今後の展開についてもわかりやすくまとめています。
アサシンクリードシリーズは、2007年の第1作の登場以来、ゲーム業界に革命をもたらしました。中世の暗殺者を描いたアーケード型アドベンチャーから、RPG要素や謎めいたストーリーを持つ大作シリーズへと成長しています。シリーズの第1作では、建物を自由に駆け巡るパルクール、群衆に紛れてのステルス、剣によるカウンター攻撃といった基本的なゲームシステムが導入され、アサシン教団とテンプル騎士団の壮大な対立構造が描かれました。この「自由への戦い」は、現在までシリーズの主軸となっています。さらに、コミックや小説、映画など多様なメディア展開を経て、アサシンクリードはユービーアイソフト最大のフランチャイズの一つとなりました。
最初の作品でプレイヤーはアルタイル・イブン・ラ・アハドとして、歴史上の著名人や「イス(Isu)」と呼ばれる先駆者の伝説に触れます。イスの遺産である「エデンの果実」などのアーティファクトが、以降のシリーズ全体の背景となりました。一方で、物語の中心は現代のテンプル騎士団「アブスターゴ」とアサシン教団の対立です。アブスターゴ社は「アニムス」と呼ばれる装置を使い、過去の暗殺者の記憶からアーティファクトを探し出そうとします。ゲームプレイでは、パルクール、群衆に紛れるステルス、剣による戦闘など、シリーズの核となる要素が築かれました。
続くII、Brotherhood、Revelationsでは舞台をルネサンス期のイタリア(フィレンツェ、ヴェネツィア、ローマ)へ移し、エツィオ・アウディトーレという人気キャラクターが登場します。これらの作品で戦闘やパルクール、罠の仕組みが強化され、よりダイナミックで垂直的なアクションが可能となりました。ストーリーも個人の復讐から先駆者文明との接触へと拡張され、アニムスを通じて過去と現代が交錯するシリーズ特有の神秘性が加わっています。
次のトリロジーでスケールはさらに拡大します。Assassin's Creed III(2012)は初めて新大陸アメリカを舞台にし、アメリカ独立戦争期の大規模な戦闘や森林・山岳地帯を再現した広大な環境が特徴でした。続くAssassin's Creed IV: Black Flagでは海洋が主役となり、カリブ海を航海しながら船を操り、海賊としての生活を満喫できます。この新要素はファンから高く評価され、シリーズ屈指の人気作となっています。
Assassin's Creed Unity(2014)では舞台をパリのフランス革命期に戻し、緻密に再現された都市と4人協力プレイが話題に。ただし、発売当初は技術的な問題が多く、賛否が分かれました。この時期、シリーズは北米の森林からパリの塔まで、多彩なロケーションを実現しつつ、ステルスアクションの基本を守りつつ新たな要素を加えてきました。
大きな転機となったのが2017年のAssassin's Creed Originsです。ユービーアイソフトはRPG要素を本格導入し、主人公バエクにレベルやスキルツリー、装備の収集・強化、クエストが加わりました。舞台は古代エジプトで、ステルスと大規模な戦闘が融合した新たな体験が展開されます。パルクールは従来より控えめになり、戦闘や探索がより戦略的になりましたが、「パルクール・ステルス・暗殺」というシリーズの基本は健在です。
続くAssassin's Creed Odyssey(2018)は古代ギリシャへ、Valhalla(2020)は中世イングランドのヴァイキング時代へと舞台を移し、性別選択や海洋探検、より複雑なRPG要素が強化されました。Valhallaでは「パワーレベル」システムや装備によるスキル強化など独自の成長要素が導入されていますが、塔の同期や隠し刃、ステルスミッションといった伝統も大切にされています。
ValhallaはRPG路線の集大成で、村の建設や大規模なレイド、サバイバル要素など多くの新機軸が盛り込まれました。
そして2023年、Assassin's Creed Mirageがリリースされます。本作は、RPG要素の肥大化に戸惑いを感じたファンへのユービーアイソフトからの回答です。コンパクトな都市型マップ、ステルス重視のゲームプレイ、パルクールの原点回帰など、初期作へのオマージュが詰まっています。舞台は9世紀のバグダッド。主人公バシムは密集した都市構造を活かして、群衆に紛れたクラシックな暗殺術を繰り広げます。アニメーションの進化により、操作感も大幅に向上しています。MirageはRPG的な成長要素をシンプルに抑えつつ、伝統の暗殺アクションを再び前面に押し出しました。
Mirageの後、ユービーアイソフトはシリーズのさらなる進化を予告しています。2022年の発表では、戦国時代の日本を舞台とするCodename REDと、16世紀神聖ローマ帝国の魔女狩り時代を描くCodename HEXEが発表されました。Hexeは主人公エルザが母の復讐を果たすために戦うダークな物語となる見込みで、従来とは異なるゲームプレイ体験になると言われています。シリーズの今後は「Animus Infinity」という新たな統合ハブに集約される計画ですが、Beyond(仮称)の詳細はまだ明かされていません。
シリーズの歴史を通じ、アサシンクリードはさまざまな進化と多様化を遂げてきました。パルクールや集団戦闘は、Mirageでアクロバティックかつレスポンスの良い操作性へ進化し、戦闘も単純な剣撃から複雑なコンボや射撃、棍棒攻撃など多彩なアクションへと拡張されています。ステルスも、群衆への溶け込みやタイミングを見計らった暗殺が初期作の特徴でしたが、Mirageでは再び群衆の密度が増し、原点の「隠れた暗殺者」の醍醐味が復活しました。
最大の実験は、Origins、Odyssey、ValhallaでのRPGシステムの導入です。レベルやスキルツリー、装備による成長システムが加わり、シリーズは本格的なアクションRPGへと昇華。それでも、マップの同期や隠し刃、ステルスキルといった伝統は今なお保たれています。
ストーリーも、アルタイルとテンプル騎士団の単純な対立から、先駆者イスの神話やアブスターゴ社による現代の陰謀、そして人類の自由と秩序を巡る哲学的なテーマまで多層的に発展しました。アニムスを通じて、過去と現代、伝説と現実が複雑に絡み合う物語構造はシリーズの大きな魅力です。
舞台設定も時代とともに変化し、十字軍時代の中東からルネサンスのイタリア、アメリカ独立戦争期やフランス革命、ヴィクトリア朝ロンドン、古代ギリシャ・エジプト、そして新たに戦国日本や魔女狩り時代のヨーロッパへと拡大しています。Ubisoftは「世界中のあらゆる時代と場所を冒険してきた」と語っており、今後も新たな舞台が続々と登場するでしょう。
アサシンクリードは、時代や舞台ごとにゲームシステムや物語を柔軟に変化させつつも、パルクールとステルスというDNAを守り続けてきました。シリーズは単なるアクションゲームの枠を超え、「自由」「文明の運命」「テクノロジーと社会」という壮大なテーマに発展しています。今後も兄弟暗殺者たちとその敵の物語は、新たな時代とともに進化し続けるでしょう。