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RTXとレイトレーシング徹底解説|仕組み・違い・対応ゲームまとめ

RTXとレイトレーシングの基本から仕組み、従来技術との違い、対応ゲームやパフォーマンス要件、歴史までを詳しく解説します。最新グラフィック技術の特徴やメリット・デメリット、代表的なRTX対応タイトルも紹介し、リアルなゲーム体験のためのポイントを網羅します。

2025年9月15日
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RTXとレイトレーシング徹底解説|仕組み・違い・対応ゲームまとめ

RTXとレイトレーシングとは何か

レイトレーシングは、光と影の振る舞いを仮想空間で物理的にシミュレートし、フォトリアルなグラフィックを実現するレンダリング技術です。従来のゲームではラスタライズ処理を用い、三角形から画面を構築し、SSAO(スクリーンスペースアンビエントオクルージョン)などのテクニックで光を近似的に表現してきました。一方、レイトレーシングではカメラから仮想の「光線」をシーンに発射し、オブジェクトや光源との交点を計算します。これにより、照明や反射、影の計算がより正確となり、光が自然にシーン全体に広がることで、柔らかな影やリアルな反射、ハイライトなどが物理的に描写されます。

レイトレーシングの仕組み

レイトレーシングでは、シーン内の各ピクセルごとにカメラから1本または複数の光線を発射します。光線がオブジェクトに当たると、その交点における色や材質、法線ベクトルなどが計算されます。さらに、そこから光源や反射面へ二次的な光線が発生し、影や反射を正確に表現します。ラスタライズでは照明や影は追加処理で描かれるのに対し、レイトレーシングは光の振る舞いを物理法則に基づいて正確に再現します。これにより、現実に近いビジュアルが得られますが、単純な三角形描画よりもはるかに多くの計算が必要となります。

NVIDIA RTXとは

RTX(Ray Tracing eXtreme)は、NVIDIAが開発したレイトレーシング専用のハードウェア加速技術を指すブランドです。RTXは2018年夏にTuringアーキテクチャ(GeForce RTX 20シリーズ)として登場し、専用のRTコアによってレイとジオメトリの交差判定を高速化しました。また、AI処理用のTensorコアも搭載され、DLSSなどの機能を実現しています。NVIDIAとMicrosoftは共同でDirectX Raytracing(DXR)APIを開発し、PCゲームでリアルタイムにRTXコアを活用できるようになりました。これにより、シーン内の照明や時間帯の変化、反射や影がリアルタイムでダイナミックに描写されます。

ラスタライズとレイトレーシング(SSAO)との違い

RTX登場以前、ほとんどの3Dゲームはラスタライズによる描画が主流でした。ラスタライズ処理では、オブジェクトを三角形に分割し、Zバッファを使って正しい奥行きを表現します。照明効果はシェーダーや追加パスで実装され、SSAOはシーンの隅などに大まかな陰影を加える手法ですが、あくまで「見た目」の近似です。SSAOは隅や隙間を暗くしますが、物理的な光の挙動は再現できません。一方、レイトレーシングでは光源の位置や表面の色、複数回の反射まで考慮して照明を計算します。たとえば、SSAOでは部屋の隅は単に暗くなるだけですが、レイトレーシングでは光が隙間からどのようにシーンを照らすかまで計算されます。RTXによる効果では、色の影響(カラーブリーディング)、柔らかな影、多様な反射表現など、よりリアルなグラフィックが実現します。

RTX対応ゲームの例

近年、多くの最新ゲームでRTXレイトレーシングが導入されています。初期の代表作は『Metro Exodus』(2019年、グローバルイルミネーション)や『Shadow of the Tomb Raider』(2018年、影表現)です。2019年末には『Battlefield V』(水や金属のリアルな反射)や『Control』(室内の影と反射)が登場しました。最も有名なのは『Cyberpunk 2077』(2020年)で、主要な効果すべてにフルレイトレーシングが使われています。『Cyberpunk 2077』では、グローバルおよび拡散照明、鏡面・マット反射、正確な影や光のハイライトがRTXで表現されています。他にも『Watch Dogs: Legion』や『Shadow of the Tomb Raider(リマスター)』などが2021~2022年にRTXモードを追加し、リアルな反射や影を実現しました。

ゲームタイトルRTXエフェクト
Cyberpunk 2077グローバルイルミネーション、反射、影
Minecraft RTX完全なグローバルイルミネーション、正確な反射、適切な影
Control詳細な反射表現と高品質な影
Metro Exodusグローバルイルミネーション
Battlefield V鏡面反射
Minecraft RTXの比較。右側がRTXオンで、グローバルイルミネーションや正確な反射、柔らかな影が描写されている。
左:RTXオフ、右:RTXオン。RTXによるリアルな光と反射が一目瞭然。

『Minecraft RTX』では、RTX対応バージョン(右)でグローバルイルミネーションがブロックを明るく照らし、水面に正確な反射が現れ、発光テクスチャが柔らかな影を作ります。RTXなし(左)では、全体的に「平坦でのっぺり」とした印象です。この比較からも、物理的に正しい光や反射を導入することで、グラフィックが一瞬で深みとリアリズムを増すことが分かります。

RTXのメリット

RTXレイトレーシングの最大の利点は、シーンのリアリズム向上です。自然な影やハイライトにより物体が立体的に見え、水やガラスの反射は極めて正確、マットな表面でも微妙な光沢が再現されます。金属部分は本物のように輝き、照明やネオンが障害物を回り込む様子もリアルに描写されます。『Control』では、壁や家具に現れるハイライトがインテリアを「生き生き」とさせ、『Minecraft RTX』では、窓から差し込む太陽光が建物の内部まで間接的に届くといった、従来手法では困難な効果も実現されています。これにより、奥行きや色彩の豊かさ、面ごとの色影響など、より没入感のあるグラフィックが生まれます。

グラフィックカード要件とパフォーマンス

RTXの最大のデメリットは、計算負荷の高さによるパフォーマンス低下です。リアルなレイトレーシングには膨大な演算能力が必要で、快適なプレイにはRTX 20・30シリーズ以降のハイエンドGPUが求められます。例えば『Cyberpunk 2077』では、ウルトラ設定(2560×1440、RTX+DLSS Quality)時でもGeForce RTX 3070や2080 Tiで50FPS前後となり、RTXなしや設定を下げれば60FPS以上を維持できます。『Control』では、4K・RTXオン・DLSSなしの場合、RTX 2080 Tiで24FPS未満にまで低下しますが、DLSSを有効化するとパフォーマンスが約80%向上し、ほぼ60FPSに到達します。十分なCPUやメモリも必要です。なお、一部RTXエフェクトは旧型GTXカードでもソフトウェア(DXR)でエミュレート可能ですが、さらにFPSが落ちるため、RTコア搭載GPUでの使用が推奨されます。多くのRTX対応ゲームでは、DLSS(AIアップスケーリング)と併用することで、画質を保ちつつフレームレートを高めるバランス運用が主流です。

RTXとレイトレーシングの歴史

レイトレーシングの発想自体は1960~70年代に生まれ、長らく映画やアニメのフォトリアルなレンダリングに利用されてきました。リアルタイムレイトレーシングがゲーム分野に本格的に導入されたのは、2018年のNVIDIA RTX登場以降です。Turingアーキテクチャ(GeForce RTX 20シリーズ)は、Gamescom 2018で初公開され、初期はPascalやTuringベースの一部旧型カードにもドライバーベータでRTシェーダーが解放されましたが、専用コアがないためパフォーマンスは限定的でした。2019年には『Battlefield V』(リアルタイム反射)、『Metro Exodus』(グローバルイルミネーション)、『Shadow of the Tomb Raider』(影表現)などが登場し、2020年には『Cyberpunk 2077』がフルRTX対応タイトルとして革命をもたらしました。その後、『Minecraft RTX』やUnreal Engine 4/5ベースの多くの新作(『Call of Duty: Warzone』『Fortnite』『Watch Dogs: Legion』など)も急速にDXR・RTXへ移行。次世代GPU(Ampere=RTX 30、2020年、Ada Lovelace=RTX 40、2022年)でRT性能が大幅に向上し、AMDもRDNA2(Radeon RX 6000、2020年以降)よりハードウェアレイトレーシングに対応しました。現在、レイトレーシングは高品質ゲームに不可欠な技術として、従来の手法を置き換えつつあります。

まとめ

RTXは、NVIDIAが提供するレイトレーシングを高速化する最新技術群であり、物理的に正しい光・影・反射表現によってゲームやアプリのグラフィックを飛躍的にリアルにします。従来のラスタライズやSSAOと比べ、その効果は圧倒的ですが、高性能なハードウェアが必要です。代表的なRTX対応タイトルには『Cyberpunk 2077』『Minecraft RTX』『Control』などがあり、圧巻のビジュアル体験が味わえます。RTXは現代AAAゲームにおける新しいグラフィック標準となりつつあります。

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